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 死ぬかと思った。  どうせ俺の人生なんて高が知れてるし、はやく死んだほうが世のため人のため、といつも思っているけれど、実際に死にかけるとやっぱり死にたくない。 […]

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 九発の残弾を早々に使い切ったアンジェリカは、熱い拳銃で手近な魚を殴りつけ、その勢いで得物をふっとばして素手になってからは、ランタン型の懐中電灯をグローブ代わり […]

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「……『いわっころがし』ちゃん」  剣が歯をむいてうなった。再び平穏を取り戻した触手は、しゅるしゅると上の方に巻き取られていく。俺はぼんやりと村人の行動を反芻は […]

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 アンジェリカは空を見上げて唖然あぜんとした。  暗い樹冠をなぎ倒し、ちらっと見えた鈍色の空に、突如炎竜が出現した。木の上に逃げてしまった少年のことも、勝手に卵 […]

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 ドゥン――  肚はらの底に響く低音とともに、巨木全体が揺れる。衝撃波に煽あおられて木の葉が舞い散った。だがこの異空間には、怯おびえて飛び立つ鳥も逃げ惑う小動物 […]

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 次の瞬間、ひときわ大きな悪寒が走って、われに返った。  気がついたら後ろ向きにかるく五メートルくらいは跳躍していた。俺のいたところに触手が落ちてきて、地面を震 […]

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 反動で目の前が真っ暗になる。じめっとした空気感も、魚の鳴き声も相変わらずだったが、ユイリがカッとなってジャンプしたのはわかった。でもって着地点がてきとうか、間 […]

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 ガトリングの銃口が、火を噴く!  のかと思ったら火じゃない。 「うわっ」  まき散らされる飛沫ひまつ、生臭さの霧が立ち込める。とっさに腕で頭を庇うものの、痛み […]

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 夜更けの砂浜で、俺たちは静かに見つめ合った。控えめな波の音が、夜の底に沈殿する空気を気まぐれにかきまわした。ユイリがこっちの次の動きを待っている。まるで目当て […]

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 たぶん夜になった。明るさが減って空気もひんやりしてきた。  俺は一人で海辺にいた。森の奥のほうで『魚』がむせぶように鳴いている。けれどこの近くには生き物の気配 […]

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