投稿サイトVS個人サイト – 投稿サイト全盛時代のウェブ小説個人サイト運営を考えた

投稿サイトVS個人サイト – 投稿サイト全盛時代のウェブ小説個人サイト運営を考えた

 個人がウェブで小説を発表しようと思ったとき、有力な選択肢となるのが小説投稿サイトの利用です。「小説家になろう」や「エブリスタ」あたりが有名どころ。わたしは個人的に「カクヨム」が好きです(Twitterカードまわりがピンポイントで好き)

 ただ、投稿サイトはポイントやランキングにふりまわされやすいのが難点です。あるいは交流・宣伝合戦に疲れたりして、個人サイトでおちついてまったり活動したい! なんていう方もいらっしゃるかもしれません。この記事はそんなあなたのために書きました。

 個人サイト全盛時代だった00年代と比べ、外的環境はさま変わりしています。そうした変化をふまえて、2018年現在小説個人サイトの運営はどうあるべきかを考えてみました。

 一言でまとめると、悪いことは言わないから素直に「投稿サイト」を使っとけ。でも独自ドメインとって本格的にやるんだったら、サイト運営もなかなか乙なものですよ、といった感じです。

ローカル/グローバルの違いはあれど、どこで活動しようがSEO対策は要る

 本題である個人サイトの運営の話に入るまえに、SEO対策について二・三書きます。

 しょっぱな意識高いブロガーみたいなことを言い出しましたが、要はあれです。広大なウェブ砂漠の中で、どうやって自分のサイトを発見してもらうか。流儀や作法がちがえども、投稿サイトでも似たような対策が必要になるんです。

「小説家になろう」における「SEO」対策

 小説投稿サイト最大手の「小説家になろう」を例にとってみましょう。

 自分の投稿する小説が選ばれ・読まれるには、なろう読者が好むキーワードを設定して、そのキーワードに沿った小説を提供するのが大前提です。こまめな更新をして新着での露出を増やす。一ページあたりの文字数は2,000字~4,000字程度にする。投稿はできるだけマニュアルで、予約投稿は避ける(小説家になろうは毎時0分にしか予約投稿設定できず、そのため予約投稿するとほかの投稿者と時間が重なり、一秒もたたずに「更新された小説」欄から流れる、つまり新しい読者を獲得する有力な手段が失われる)などなど。そのうえで、ランキングに乗らないと読まれない、と言われています。実際そのとおりです。

 どんな小説をどのように投稿しようが投稿者の勝手なのですが、読者の好むものを提供してランキングなどで目立たないかぎり、アクセス数は極限小です。とにかくテンプレを書け! 話はそれからだ! って感じですね。でも、実際そのとおりです。

 ただ、なろうの場合は読み専さんが多いものですから、いわゆる王道なろう小説でないものを探す人もそれなりの数、存在します。したがって、なろうテンプレに沿ったものでなくても、ちゃんとしたタグと紹介文をつけていれば、タグや検索エンジンを使って積極的に小説を探している人に読んでもらえる可能性があります。

 いずれにせよ、小説を投稿しただけで読んでもらえる、ということはありえなくて、内容に合致したタグ付け、わかりやすい紹介文を書いてはじめて、膨大な小説の中から自分の小説を探し出してもらえるのです。そして投稿サイトにマッチしたフォーマットで小説を提供し、見つけてくれた人にストレスなく読んでもらう。読者が楽しめる展開をコンスタントに用意する。そうすることで、ブクマやポイントをもらえ、あるいは感想やレビューをもらえたりする。すると自分の小説のサイト内での評価が上がる。こうした一連の対策こそが、「小説家になろう」というサイト内における「Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)」に他なりません。

 なろうテンプレに沿う=ビッグワードを狙うにしろ、ノンテンプレながらも着実に見つけてもらう=ロングテールを狙うにしろ、適切なタイトル・適切なタグ(キーワード)・適切な説明文(概要)・読みやすいフォーマットで書かれた小説本文が必要です。

 もっとも「小説家になろう」では、投稿した小説は即新着に乗り、検索エンジンでも探せるようになるので、本来のSEO対策に比べたらうんと楽です。

 自分でドメインを取得してのわりとガチなサイト運営となると、タイトル・キーワード・概要の設定のほかに、検索エンジンに見つけてもらうためにGoogle search consoleに登録して、サイトマップ(xmlファイル)を作って送信し、そのうえドメインパワーに不安があればFetch as GoogleとかでURLをクロールしてもらえるようにアピールしたりなど、やることは多いです。しかも新着一覧とかないですからね。

 それとは別に水面下で正しい構文でのウェブページ作りとか、レスポンシブデザインを取り入れてモバイルフレンドリーにしたりとか、場合によってはAMPに対応したりとか、とにかくページをかるくするなど、ユーザー体験の向上への施策もやりだしたらきりがありません。投稿サイトを利用すれば、基本的なフォーマットはサイト側が提供してくれるので楽ちんです。

 加えてこれが最重要ですが、なろうで小説を検索する人は大前提としてウェブ小説を探しています。Googleでサイトを検索する人の圧倒的多数はウェブ小説を探していません。ウェブ小説の読み手として選別済みの相手に情報を提供することになるので、通常のSEO対策に比べたら精度も高く、新着ピックアップもあるので、超をいくつつけても足らないくらいのイージーモードです。

 なろうに小説を投稿しても、ほんとマジで誰にも読まれませんが、それでもウェブの海にぽつんとホームページをつくるのに比べたら読まれる可能性が非常に高い。投稿サイトにウェブ小説が集まるのは力学的に当然の帰結です。

個人サイトとサーチエンジンは衰退しました

 00年代には投稿サイトがたくさんあって、それらをインデックスしたサーチエンジンがありました。現在ではそのほとんどが閉鎖しています。書き手は人の集まる投稿サイトに小説を投稿するようになり、集客のむずかしい個人サイトは数が減って、そうした個人サイトを相手にしていたサーチエンジンも数を減らす。ただでさえ少ないサーチエンジンに人が集まらず、個人サイトは宣伝する場所がない。いっそう投稿サイトへの移行圧力がかかる。個人サイトからみたら負の連鎖ってやつです。

 で、そんな時代に、新たに小説個人サイトを立ち上げた愚か者たちがいます。それが私たちです(立ち上げたのは私なので、実際すじこは関係ないのですが、彼女もこのサイトの管理人ですし、あえて彼女のために「すじこはちがうんだよ!」とか言うのはめんどくさいので問答無用で連座させます)

投稿サイト時代、個人サイトはいかにして読み手に発見されるのか

 大ざっぱに言って、投稿サイトとSNSの二択です。投稿サイトも大抵はSNS的機能を持っているので、乱暴に言えばSNSがほとんど唯一の流入経路です。

 SNS。小説を書いて宣伝しようと思う人はたいていTwitterアカウントを作りますが(Twitterは本当にSNSなのか? という問題は、ここでは触れません)、SNSは交流してこそ意味があります。ただ宣伝ツイートを一方的に垂れ流すアカウント、フォローされてもし返さないアカウント、沈黙してばっかでなにをたくらんでいるのか不明なアカウントでは、流入経路としてまったく機能しません(自分たちに盛大にブーメラン投げてます)。

 そこで、ひとつの重大な問題が浮上します。

  1. 投稿サイトのポイント制度とか人間関係に疲れた
  2. 個人サイトでまったりやりたい
  3. まったりやるっていっても人が一人もこないのはさみしすぎるから宣伝したいのだけど、小説サイトを登録できるサーチエンジンが少ない・人も来ない
  4. Twitterとか投稿サイトで交流してサイトに人を呼ぼう
  5. 投稿サイトのポイント制度とか人間関係に疲(以下略

 という無限ループに陥るんですよ。そもそも人付き合いが苦手だから個人サイトでまったりやろうと思ったのに、結局人を呼ぶためにSNSを使わないといけない。どこにいっても交流からは逃れられないのか! と、サイトオーナーは絶望に打ちひしがれるわけです。

 私もすじこもコミュ障なので、絶望に打ちひしがれました。いまのご時世、コミュ障であることは二重にも三重にも十字架を負っているのと同じ。原罪の多重債務者。すじこは血の涙を流して床をなぐりまくります。

「どうしても、どうしても交流をしないといけないのですか! ああ、神よ! わたしたちはただ、己の作品を作って世に知らしめたい。それだけなのです! 交流も、多少はできますが、あまりに過剰だと死にます! 神はわれわれに死ねとおっしゃるのですか!」

 すると、パンテオンの天窓から光があふれだし、聖堂内を真っ白に染めました。すごく偉大そうな感じのハードビートが聖なる空間を揺さぶります。

『すじこよ、よく聞くがいい。SNSは現状のおまえが手にすることのできる唯一の流入経路。だが着実に種をまけば、未来のおまえはもう一つの流入経路を手にする可能性がある』

 と、神はじつにまどろっこしい言い方で、すじこに進むべき道を示されたのです。

交流したくないのなら、流入経路はGoogleさんしかない

 ただしこれはいばらの道です。なぜなら検索エンジンで漠然とウェブ小説を探す人はほとんどいないからです。さりとて投稿サイトでははやりのジャンル以外日の目をみません。交流をしないのであれば、なおさらです。ノンテンプレの場合、投稿サイトに投稿しようがスタンドアロンでウェブの海に垂れ流そうが、読まれないのには変わりないです。

 それならば、ポイント制度の負の影響をうけることなく、もしかしたら思わぬキーワードの組み合わせで上位表示されるかもしれないGoogleさんのほうが、場合によっては有力な流入経路となりえます。

 ただし、この可能性にアクセスするには一定の条件をクリアしないといけません。

個人サイトにおけるSEO

独自ドメイン取得の必要性

 サーチエンジンの衰退したこのご時世、交流せずにサイトに人を呼ぼうと思ったら、SEO対策は必須です。そして対策の対象になるGoogleの検索結果を見ればわかりますが、特定のドメインの記事がずらっと並ぶ、なんてことはありませんよね。同じサイト内の似たようなコンテンツは畳まれたり、表示されない傾向にあります。

 つまり、独自のドメインを持っていることは、Googleで検索されることを想定した場合、それだけで強みになるということです。

 先日この記事((2018)電子書籍を個人出版したい人が検討しそうな選択肢・可能性を全部書き出してみた)で、本格的にビジネスをやるんじゃなかったら、ドメインなんて要らない、と書きました。

 ですが、これはあくまでストアでの検索やSNSでの宣伝効果を加味した場合です。まったく交流なしに個人サイトを露出しようと思うのであれば、話は別です。無料のブログやホスティングサービスを利用してサイトを作っても良いのですが、同じドメイン下の似たようなコンテンツにPV数などで負ける可能性が高いので、投稿サイトを利用したときと同様に完全にウェブの海に埋没してしまいます。

 独自ドメインを持っていれば、違うドメインである、というその一点でもって、Googleさんに拾ってもらえる可能性があるのです。

 SNSを通じた露出がどうしても無理であるのなら、自前のドメインを持つのは必要最低条件です。

 ところで独自ドメインはタダじゃありません。ドメインだけではウェブサイトは作れないので、有料サーバーをレンタルする必要がでてきます。TumblrBloggerならオプション料金なしに独自ドメインが使えますが、独自ドメインは別途購入して更新していかないといけないです。大正義.comドメインならば年千五百円程度、うちみたいな安い.workドメインでも更新料は年千円です。つまりどう転んでもお金がかかります。

 あなたの小説は、そういうコストをかけてもなお、露出していきたいものですか? もしそこまで大仰なことでなければ、投稿サイトを使うのが今のご時世では最適解です。

「交流せずにすこしでも露出する可能性があるのなら、俺は独自ドメインに魂を売る! 千円がなんだ! 二千円がなんだ! 高級.jpドメインだってとってやらぁ! コミュ障同人サイトライフを送るために必要な犠牲である!」

 と、開き直れたあなたは、さっそくドメインをとってくると良いです。善は急げです。

投稿サイトと個人サイトに二重投稿すること

 ある人はこう考えるでしょう。

「独自ドメインでSEO対策しながら個人サイトを運営しつつ、同時に投稿サイトでも露出していったら、手間はかかるけと見てもらえる機会は増えるし、投稿サイトの利用自体はお金がかからないし、一番良いんじゃないだろうか?」

 ところが、そうでもないんです。あなたが宣伝に使いたいと思っているその投稿サイトは運営期間も長く、コンテンツも充実しているため、Googleさんは「信頼のおける立派なサイト」と認識しています。異なるドメインでほぼ同じ内容のページが二つある場合、検索エンジンはドメインパワーの強い、より信頼のおけるサイトの内容を優先して表示します。botがクロールする場合でも、パワーの弱いあなたのサイトは後回しです。

 すると、どうなるか。自分のサイトのコンテンツのほうが、投稿サイトのコピーコンテンツ=価値の低い記事、と見なされてしまいます。

 せっかく自分が種をまいて育てようとしていたものを、二重投稿したがばっかりに、投稿サイト側に持っていかれてしまうのです。投稿サイトに宣伝効果を見いだすのであれば、はじめから投稿サイト一本にしたほうがよいです。お金もかかりません。

 独自ドメインで小説サイトを運営するのであれば、他のサイトに色気を出さずにストイックに自サイトと向き合っていくことが、長期的にはサイトを育てることにつながります。

どこに行っても「交流」と「SEO対策」からは逃げられないです

 以上、わりと極端なことを書きました。実際のところ、私たちは交流が苦手で、かつ独自ドメインでサイトを運営していますが、まったく交流をする気がないかといえばそうでもなく、投稿サイトは絶対に使わないのかといえば、そうでもないです。ケースバイケースですね。

 もしどうしてもスタンドアロンの小説サイトをつくるのであれば、独自ドメインをとって本気モードで運営するのが良いんじゃないかと思います。少なくとも精神的には良いです。誰かに評価されなくても、それどころか気づいてもらえなくても、自分の本拠地を着実に構築しているんだという満足感があります。そのあたりは小説を書くのに似ているなと思います。

 だんだんとサイトが立派になってくると、チョモランマとは言わないまでも高尾山に登って帰ってきた! くらいの達成感は得られます。記事を増やしてサイトを育てる感覚は育成ゲームに通じるものがあります。この種の「常にプラスの方向に成果が積み上がっていく」感覚は、投稿サイトではなかなか得にくいものです。

 ですから、投稿サイトが嫌になったときにはぜひ、自分の城を作るつもりで小説サイトをはじめてみてください。きっといままでとは違った地平が見えてくると思います。